ジョンロブ 一つの頂点と呼ばれる革靴。職人から見るジョンロブの魅力とモデルについて

革靴ブランドとして誰もが知るジョンロブ。既製靴製品としては1つの頂点に達していると言われるその作りは正に逸品。
今回はジョンロブの靴づくりにおける拘りと魅力あふれるモデルの数々をご紹介しよう。
ジョンロブというブランドとは
ジョンロブってどんなブランドなの?と聞かれると真っ先に言えるのが「歴史ある本格革靴」であること。
1866年に創業し、ビスポーク専門から既製靴も取り扱うようになり様々な靴を作り出してきている。
シティやフィリップと言ったジョンロブの名作は、靴好きであれば知らぬ者はいないだろうし、職人の技術、使われる革、どれを取っても引け目のないブランドなのである。
まずは、どのようにしてブランドができていったのかジョンロブのヒストリーからご紹介しよう。
ジョンロブの誕生から今
創業者のジョン・ロブという名前をそのまま使用したジョンロブは、1866年にロンドンにて第一号店が誕生した。
通常であれば開店後に固定客ができ、評判が生まれてジワジワと成長するケースが多いのだが、ジョンロブの場合は違う。
ロンドン店ができる4年前からジョンロブ氏は英国万国博覧会で金賞を受賞しており、1年後んはロイヤルワラントと呼ばれる英国王室御用達の称号も受け取っている。
つまり、最初から一流の靴職人であるという地位を持っていたジョンロブは、開店と同時から人気店だったという訳だ。
ビスポーク専門だったため、販売相手は政界の人たちや上流階級ばかりだったという。
それから約100年後の1981年に既製靴を販売するレディメイドが開始され、ビスポークと既製靴という2つの方法で靴を作り続けている。
ジョンロブ・パリとジョンロブ・ロンドンの違いとは
ジョンロブにはジョンロブ・パリとジョンロブ・ロンドンがあるという話を聞いたことがないだろうか?
どちらも同じジョンロブではあるものの、別会社とされている。その訳は既製靴製造スタートにある。
ジョンロブにはパリ支店があるのだが、1970年代後半に閉鎖寸前まで追い込まれることがあった。
そこで技術を見込んで買収したのがエルメスグループであるその後直ぐに既製靴のラインが完成し、既製靴を作る「ジョンロブ・パリ」が誕生したという訳だ。
その一方、ロンドン店は「ジョンロブ・ロンドン」と呼ばれビスポーク専門店となる。
どちらも変わらぬ拘りで靴を作り続け、両方あってこその「ジョンロブ」なのだろう。
ジョンロブの拘りの数々
ここからはジョンロブが作る靴の拘りについて紹介したい。
150年以上使われる伝統技術は今も変わらず、正に一級品の仕上がりで作り上げられる。
靴を1足作るのに190もの工程を要し、使用する革も上品質に拘り抜く、ジョンロブの拘りの数々を紹介していこう。
ジョンロブの美しさを保つ秘訣は革にあった
靴の美しさを表現する一つの要素として「革」がある。
ロイヤルワラントの名誉を獲得が証明するように、作りや品質は十分すぎる程高いのは容易に想像ができる。
しかし、ジョンロブは革の品質だけでなく素材自体にも拘りがある。
フルグレインという革を知っているだろうか?フルグレインは形状を覚えさせることができ、また、覚えた形に戻る特性がある。
ジョンロブではフルグレインの革が採用されており、いつまでも美しく形を保持できるように特性を活かしているのだ。
品質だけでなく、素材自体の特性をも活かしている。それがジョンロブなのだ。
コンマmm単位のズレも許されないステッチ
ステッチには様々なタイプがあり、モカ縫いやツイストと言った手法がある。これらを拘って靴を購入する人も多い。
しかしジョンロブの拘りはこの靴にはこのステッチが最適だ、なんて次元の話ではなく、コンマmm単位のズレすらも許さないという拘りを持つというか、徹底振りで作り上げている。
全てのステッチをmm単位で確認する。これがどれだけクレイジーなことかおわかりいただけるだろうか?
それを機械ではなく「職人」がやるというのだから脱帽だ。
レディメイドでこの履き心地はありえないとの声
人は10人いれば10人とも顔に違いがあるように、足も同じく異なる。
そのため一般の既製靴も万人向けのラストを使用して作られているとは言え、100人中99人はしっくりこないくらいとまで言われている。
では、ジョンロブのレディメイドはどうだろうか?
実際に履いた人たちの声からは、レディメイドとは思えない履き心地だという絶賛の声が非常に多いのだ。
これまでビスポーク専門でやってきて様々な人たちの足を形にしてきたジョンロブならではの技術が駆使されている。
ジョンロブを代表する靴
ここからは既存のモデルの数々を紹介していく。
フォーマルなシーンからカジュアルまで様々な用途に向いた製品をまとめてみた。
シティⅡ - ジョンロブの基礎にして至高
ジョンロブに於いてこんな言葉がある。
「シティに始まりシティに終わる」
正にシティはジョンロブの中でも傑作だろう。
紹介するシティⅡは初代シティで使われていたラスト「8965番」が「7000番」に変更されたものだ。
銀行で働くビジネスマンをイメージして作り上げられたこの靴は、シンプルに究極の美しさを求めた形だという。
ジョンロブの拘りを包み隠さず表現している一足なのは間違いない。
フィリップⅡ - シティに並ぶ傑作
ジョンロブの代表作の1つでもあるフィリップⅡ。
シティⅡ同様に同じ「7000番」のラストを使用しているため履き心地も近しい。
ミニマルなシティに比べると、フィリップはブローグが際立ち華やかに感じるだろう。
1足だけでなく2、3足と購入するファンも多い。
ウィリアム - ダブルモンクの原点
ダブルモンクストラップの原点とされるウィリアムは、2代目ジョンロブの責任者「ウィリアム・ロブ」が英国王エドワード8世に向けて仕立てた靴だ。
当時、モンク自体は存在したのですがストラップをもう1本追加するという奇抜なデザインで話題となり、他のブランドのお手本ともされている。
ダブルモンクの良点、それはドレスシーンからカジュアルシーンまで履きこなせること。デザイン上、向き不向きのシーンは存在しているが、ウィリアムのような器用な靴もなかなかないだろう。
シャンボードⅡ - カジュアルにもおすすめのUチップ
ラスト「8695番」を使用して作られるUチップのシャンボードⅡ。
ステッチは手縫いで仕上げられ、洗練されたデザインが特徴だ。
カジュアルはもちろんのこと、ビジネスにも使用できる器用な靴。
現在、シャンボードⅡしか購入することができず、中古でしかシャンボードを購入することができない。
ラッセル - ジョンロブの隠れた名作
シティやフィリップと同様、パンチキャップトゥではあるものの少し日の目に当たりにくい存在。
だからこそいつもと違う雰囲気を味わいたいという人におすすめできる一足。
また外羽なのでカジュアルに履きこなせるのもジョンロブ ラッセルならではないだろうか。
ロペス - 一足は持っておきたいローファー
コインローファーながらも流石はジョンロブである。
徹底した作り込みと、カジュアルなのにズシリと重さを感じるデザインはまさに一流。
そう感じさせてくれるのは使用されている革の上質な色合いも関係している。
ドレスシューズと比べても見劣りしない。
チューダー - ジョンロブのサイドゴア
シティやフィリップと言ったフォーマル寄りな靴が目立つが、サイドゴアブーツのチューダーにも定評がある。
履き口に向けて細くなっており、タイトな履きこなしが可能な一足。
ヴィエナ - 不思議と引き込むデザイン
他の靴とは雰囲気の異なるオールドファッションなヴィエナ。
革を大胆に使っており、その異質な形は多くの人々を虜にしている。
履きこなすのが難しいと言われており、是非とも挑戦してみてほしい。
シャンボア - シンプルなUチップ
シンプルな外羽のUチップだが、ジョンロブの美しさは至る箇所で再現されている。
ラストは一般的で多くの人にしっくりとくる「8695番」を使用しており、履き心地も保証されている。
チェスター - オフに履きたくなるローファー
ロングノーズでカジュアル過ぎないジョンロブのローファー。
オフ日の堅くもなく、緩すぎない靴を履いていきたいのであれば最適な一足。
見どころはステッチ部分であり、これでもかと技術が詰め込まれている。
エドワード - ノンライニングでエレガンス
チェスター同様、どちらかと言えばカジュアル向きなエドワード。
しかし見てわかる通り、その出来栄え、デザインをカジュアルだけで抑えておくのはもったいない。
ラストは「7000番」と少し珍しいが、履けば惚れる一足。
ボウスプリット - ジョンロブのタッセルに刮目せよ
メタルパーツのタッセルコードが印象となるボウスプリット。
ラストは「1105番」を採用し、ゆったりとした休日なんかに履くのもいいだろう。
タッセルに目が行きがちだが、引き立てているのはまさしく革の良さもある。
キプリング - 定番デザインのローファー
所謂、ローファーと言ったらこんなのだよねという定番デザインンのキプリング。
サイドにはJLのロゴが刻まれており、ラストには「4596番」が使用されている。
フォクストン - ロゴ刻印のあるローファー
キプリング同様にJLのロゴが刻まれているフォクストン。
似てはいるが、大きく違うのは中央部に設置されたメタルパーツ付のタッセルコードだ。
アッパー両脇にはレリーフもあり、存在かのある一足。
リオ - 丸みを帯びたスエードのコンビ靴
リバードスエードとスエードのコンビローファーとして有名ではあるが、注目すべきは「4395番」ラストの丸みを帯びた先端だろう。
ローファーと言えば少し尖った印象があるが、リオでは尖りが少なく他のローファーと並べてみると独特なデザインに気づくことができる。
チェルテンアム - ベヴェルドウエストの凄さを思い知る
ハーフムーンと親子パーフォレーションがサドルに程くされているチェルテンアム。
アウトサイドカープのあるラスト「1105番」を使用して作られているため、他のジョンロブのローファー製品とは一味も二味も違いを楽しめる。
チャペル - 贅沢に革を使用した逸品
アッパー全てを一枚革で作り上げた贅沢な一足。
ラストは「8000番」を使用しており、ロングノーズが印象的。
若干、甲部分が低く作られているためタイトに履きこなしたい時に良いだろう。
トウスター - 星を表現したメダリオンに注目
細身なラスト「7000番」を使用しているトウスターは、名前に星が含まれているようにスターをメダリオンで再現している。
遊び心の多い一足で、カジュアルにも最適である。
ラングトン - 革を存分に堪能する
つまみ縫いのスキンステッチも印象的ではあるが、見どころは革にある。
どの靴にも最上級の革を使用しているが、ラングトンはまた別格である。
デザインだけでなく、素材を存分に堪能することができるだろう。
アスコット - レディメイドとビスポークの良いとこ取り
シームレスヒール、ベヴェルドウェスト、個性的なメダリオンとどれもレディメイドでは珍しい仕様で、ビスポーク的要素も持ち合わせた一足。
レディメイドでもここまで革靴を楽しめると思わせる一足。
ラングレー - 4アイレットでスッキリ
キャラメルスカーフを使用し、きめ細かさが際立つラングレー。
アイレットが4つというのもラングレーの持ち味の一つである。
ビーストン - 意外なパーフォレーション
外羽でカジュアル寄りなフォーマル靴。
そして持っている人じゃないと気づきにくいが、パーフォレーションの穴の形が円ではなく、楕円形であるのも見どころの一つと言える。
ラストは「8695番」を使用している。
ティルバリー - ジョンロブ、初の試み
ジョンロブブランドとして初のレザー浮彫を履き口に施したのがこのティルバリーである。
プレステージラインであることから、作りも保証済み。
これからを代表していく作品として知られていくのは間違いないだろう。
アッピンガム - スクエアモカでモダンに遊び心を
スクエアモカのアッピンガムにはアンティークさと遊び心を感じる一足である。
木型は「1306番」を採用しており、スクエアトゥながらも広々とした感覚を味わえる。
ロムジィー - 線に感じる極限の美しさ
遠くから眺めると一見普通なチャッカブーツなのだが、手に持ってみるとその印象早変わりする。
切り替えの線がここまで滑らかに仕上げられるものなのだろうかと、美しさに気づけるからだ。
履き口に向けて細みに作られており、履いた際のファット感を生み出す。
ラドロー - ジョンロブのダブルバックルブーツ
巧みなライトアングルステッチが印象的なダブルバックルブーツ。
ジョンロブと言えば、シンプルな美を極めたという認識を持っている者も多いと思うが、ストラップの作りも優秀である。
スコットニー - 大胆なバックルに好印象
タイトなスェードに、大き目のバックルによりカジュアル度の高いスコットニー。
少し尖ったトゥもジョンロブの今後の進化が伺える。
ウォブン - 細身のブーツで感じるジョンロブの良さ
ダブルバックルが付いているがこれはあくまでも飾りであり、実際はインサイドジップのあるブーツだ。
細身に作られているウォブンはジョンロブの紳士らしさをつま先からかかとまで表現しているようだ。
一足買ったらキリがない。それがジョンロブ
作り込み、革の質、洗練されたデザイン。
どれを取っても一流のジョンロブはよく「靴好きなら一足は持っておきたい」と言われているが、注意しておくべきことがある。
一度買ってしまうと、もう一足、もう一足と止めることのできない魅力を持っている。
流石は革靴の頂点に達していると言われるだけある。